1 市民活動への社会的認知の向上
NPOバンクの話題が、数多く広報媒体に取り上げられたことで 「NPOとは何か」「NPOの現状や課題」を一段と広く社会に浸透するきっかけとなったかと思います。
2 資金面における市民活動支援体制の構築
事業型NPOがかかえる最も重要な課題が資金の調達であり、NPOバンクができたことで、短期の運転資金を中心に融資することができるようになり、当座の支援体制を整えることができたと思います。
3 北海道の先駆性
NPOバンクは、NPO法人によるNPOへの金融システムとして全国初のものです。また、市民・企業・団体だけではなく、行政からも出資協力を受けていることは協働プロジェクトの推進に道を拓くものになったと思います。
さらに、その組織においても専門家からなる融資審査委員会を設け、理事以外の学識経験者や民間金融実務担当者を交えて審査を行なっており、また、審査方法も審査内容に客観性を持たせる独自の融資判定表を使用するなど、ボランティアによる民間金融組織として、画期的なものとなっていると考えています。将来的には、この融資判定表による審査を通じて、NPOに対する審査ノウハウが蓄積され、NPOの資金・財務分析研究のうえで、先駆的なものとなる可能性があります。
4 市民金融の可能性
現在、道内金融機関の貸出は減少しており、国債などの有価証券での運用が伸びています。これは、地域で集められた預金が地域の中に環流していないことを意味するものであり、地域経済が閉塞する要因になっていると考えます。このような状況下で発足したNPOバンクは、これまで資金がまわらなかったセクターに活動基盤を強化させることとなり、地域の中で資金の循環の加速と、ひいては地域経済の活性化に貢献するものと思われます。
また、NPOバンクは、専門家ボランティアが一般金融機関の審査手法と異なる独自の審査を行うことにより、NPOに対するリスク評価のあり方を提示するきっかけになり、将来的に一般金融機関によるNPOへの融資の道を開く可能性もあると思います。
さらに、NPOバンクと民間金融機関が連携して、短期・中期・長期の資金をそれぞれの金融機関が得意とする分野で融資できれば良いなと考えています。
5 市民と産学官連携の新たなかたち
NPOバンクは、大学教員、民間金融機関職員、NPO団体役員、専門性を持つ民間人、行政関係者などの協力連携の活動から出発したものであり、民間の機動性と有識者の専門性と行政の事務調整機能がうまくマッチし、短期間に作成することができました。
加えて、この組織が具体的事業に踏み出すことになったのは、市民活動支援の要=NPOへの資金供給というミッションを明確にしていたことが決め手となっており、有機的な連携の実現には、
活動理念とミッションの共有が関係者の間に形成されていることが重要であると思います。
今後とも、NPOバンクへの皆様からの益々のご支援・ご鞭撻をお願い申し上げまして、私見ではありますが、私の報告を終わります。
北海道NPOバンク理事 佐藤 隆